たまゆら( 玉響 ) マリアダカラさま『ときはめぐりめぐるとも』より

マリアダカラさまより作品をお借りして、イラストを描かせて頂きました。
快諾して下さった、マリアダカラさまに心より感謝致します。
また、『ときはめぐりめぐるとも』の読者の皆様には、イメージ通りではなくてお見苦しいかとも思いますが、大きなお心でご覧頂けましたら幸いです。



たまゆら ( 玉響 )

文 マリアダカラさま
絵 うたかた



勾玉同士が触れ合ってたてる微かな音のこと。

転じて、「ほんのしばらくの間」「一瞬」(瞬間)、あるいは「かすか」を意味する古語


 聞き慣れた彼女の少し低い、かすかに掠れた声が聞こえてきた。何の話をしているのだろう。相手は誰だろう。

 軍人らしく歯切れよく話す彼女の目の輝き、引きしまった口元、のびた背筋が目に浮かぶ。





そういえば今朝馬車で邸を出るときに、おかしな方向にくせがついてしまった右耳のあたりの髪の毛を気にしていたっけ。きりりとした彼女の声を聞きながら、何故かこんなことが急に浮かぶ。

 会話が終わったと言うことが、彼女の声のトーンからわかる。


 この口調が職務を離れて、彼と話すときには、スイッチを入れ替えたように変わる。

 声の調子、ことばの選び方、表現、アクセントまで。

 それが彼にはたまらない。甘えられているようで心地良い。幼いころからずっと一緒に過ごしてきたのだものな。

 はりつめていたものが緩んで、発音からも角が取れる。彼の名を呼ぶとき語尾からかすかにもれる吐息の微妙な強弱。


 「アンドレ?」

 執務室から出てきた彼女が、彼を見上げる。

 地中海の深い青を思わせる瞳の色。穏やかな海がわずかにさざなみをたてるように、揺れる。






言葉にならない訴え。

 彼は自分の右手のひらを彼女の左の頬に添わせる。なめらかな肌の感触を手のひらいっぱいに感じる。

 彼の手には彼女の頬はこんなに小さい。

 体を折るようにして顔を近づける。

 彼女が目を閉じる。

 左頬を包む手をそのままに、右の頬にそっとくちびるを寄せる。かすめるくらいにそっと。

 そしてくちびるへと移動する。

 心臓がドクンと音をたてる。たったこれだけの触れ合いなのに。






わずか数秒のできごと。ふたりはすぐに離れる。

 彼女の感覚に残るのは左頬の彼の手のぬくもりと、触れたのかもわからぬくらいの彼のくちびるの乾いたやわらかさ。

それでも息が止まりそうだった。






「スリリングだな」

 こっそりと悪戯をしている子供のような顔をしながら、頬をほんの少し染めて、彼女がつぶやく。






FIN



万葉集より

 たまゆらに昨日の夕(ゆふべ)見しものを 今日(けふ)の朝(あした)に恋ふべきものか

柿本人麻呂




三様へ
いつか私の書く文章が好きと仰って下さったように記憶しています。
文章がお好きなら、マリアダカラさまのところにもお立ち寄りではないかと勝手に思い込み、彼女の作品をお借りするに至りました。
マリアダカラさまも私も、三様が穏やかな日常に1日も早く戻れる事をお祈りしています。
また、このような術しか持たない事をお許し願えればと思います。

うたかた





11日21時に4枚目を、12日10時30分に3枚目の画像をそれぞれ差し替えました。
前のものにも温かい拍手をありがとうございました。



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  1. Oscar et André
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lesyeuxsaphir

Author:lesyeuxsaphir
『ベルサイユのばら』のオスカル様に恋い焦がれる『うたかた』の二次創作ブログです。
手描きのイラスト(デジタルのものも少し)と短い会話文で綴るサイドストーリー、コミック、雑文などを置いています。
原作をこよなく愛していますが、アニメも大好きです。
間違いだらけの拙い作品ばかりですが、大きなお心で受け流して下さいませ。
また、原作者様、出版社様等とは一切関係ございません。
どうぞよろしくお願い致します。
2015年7月からpixivにも投稿していますので、宜しければお立ち寄り下さい。

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