La tentative ( 企て ) 9
『オリアナ様、先ほどこのような手紙を小間使いが受け取ってしまったと申しております。
持参した者は小太りの男で、直ぐに走り去ったとの事でございます。
あれほど怪しい者から手紙や貢ぎ物を受け取らない様にと躾けてありますのに。』
『ギュリス、小間使いを叱らずとも良い。
どうせいつもの誹謗中傷だろう。
『フランス女』にもすっかり慣れたぞ。
…とにかく、読んでみよう。』
【4日後のオペラ座の仮面舞踏会に来られたし。貴女の虜より。】
『と、虜!
オリアナ様に向かって、なんて無礼な。
それに、そんな場所にはお出でにならない事を知らないのでしょうか。』
『ちょうどその夜、陛下と王妃様は公爵家との晩餐会に出られるはずだ。
これは私への挑戦状かもしれん。
私は行くぞ、ギュリス。
用意を頼む。』
『いけません!
危のうございます。
仮面で賊の顔がわからないのですよ。
もしもの事でもあったら…。
わざわざ危険な場所にお出でになるのは、おやめ下さい。』
『危険かどうか、行ってみようではないか。
但し、武器の用意も抜かりなくだ。』
3月29日画像を替えました。
前のものにも拍手をありがとうございました。
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La tentative ( 企て ) 8
『類稀なる美貌をもち、女ながらにフランスの近衛連隊長として軍服を身に纏い、銃剣や乗馬に長け、教養も秀でていたという。
子もまた間違いなくその血をひくであろうな。
…恐ろしい事よ。
王妃の女腹には助けられたが、あの女もそうであるかを思案するほど、今の私は気長ではないのだ…。
…手段は選ばぬ。
早急にオリアナを始末せよ。』
子もまた間違いなくその血をひくであろうな。
…恐ろしい事よ。
王妃の女腹には助けられたが、あの女もそうであるかを思案するほど、今の私は気長ではないのだ…。
…手段は選ばぬ。
早急にオリアナを始末せよ。』
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La tentative ( 企て ) 7
『オリアナ様、オリアナ様、如何なさいましたか?』
『…ん?
ああ、眠ってしまった様だな。』
『お疲れのご様子ですね。
湯あたりをしてしまうといけませんので、もうお上りになった方が宜しいかと存じます。』
『ああ、そうだな。
そうしよう。』
『お前達、オリアナ様がお上りになりますよ。
お支度を整えて差し上げて。』
『はい、かしこまりました。』
『このところお食事をあまり召し上がっていないようですね。
少しお痩せになったようですし。』
『心配はいらぬ。
…私が痩せるとお前が叱られてしまうのか…。
息苦しいものだな。
自己管理はしているつもりだし、死のうなどとは考えていないから安心してくれ。』
『オリアナ様、私は、その様な理由で申し上げたのではありません。
…御髪は私が致します。
お前達は下がってよろしい。』
『はい、それでは失礼致します。』
『オリアナ様。
侍女を供にする事も許されず、たったおひとりでこの国にお越しになった貴女様は、この国の誰よりも気高く潔く美しく、一目で私は心を奪われました。
この方の侍女としてお仕え出来る喜びを感じると共に、お守りして行くのは私の使命と心得、全力でお尽くししようと思いました。
それは月日を経た現在でも変わる事はございません。
…そして日々の中で思う事がございます。』
『なんだ、ギュリス。』
『貴女様が再びお国にお戻りになるために、その手助けをするのが私の本当の務めであると確信したのでございます。』
『…それは…』
『女の私ですら魅了されたのです。
お国には貴女様のご帰国をお待ちになっている殿方がいらっしゃるのではないかと。』
『…。』
『普段、陛下のお言葉に、揺れる心を表にお出しにならない貴女様が、あの時は…。』
『…。』
『貴女様は、この国にいらしてはいけません。』
『…ギュリス、私は1人ででもこの国を出る策を練っていた。』
『どうか私をお役立て下さい。』
『それが何を意味するか、わかっているのか?
そんな事をしたら、お前やお前の家族にまで害が及ぶのだぞ。』
『私には親はおりません。
…私の母は小間使いとして宮殿に上がり、ある方のお手付きとなり密かに私を産みましたが、産後の肥立ちが悪く亡くなったのでございます。』
『ある方とは…陛下の事か。』
『…その通りでございます。』
『陛下を恨んでいるのか?』
『…憎い相手ではありましたが…。
風の噂で聞いた落とし子の事を哀れに思ったのか、影で支援をして下さっていた様です。
私は、貴女様が母の様に危険な目に会うのが怖いのです。』
『では…やはりお前の母上は殺されたというのか?』
『おそらく…。
ですが、それは陛下にではありません。』
『ふむ。
もう、何度かそんな目に遭っているぞ。ふふ。
私に子が生まれるのを恐れているのであろうな。
よくある事ではあるが。』
『…ん?
ああ、眠ってしまった様だな。』
『お疲れのご様子ですね。
湯あたりをしてしまうといけませんので、もうお上りになった方が宜しいかと存じます。』
『ああ、そうだな。
そうしよう。』
『お前達、オリアナ様がお上りになりますよ。
お支度を整えて差し上げて。』
『はい、かしこまりました。』
『このところお食事をあまり召し上がっていないようですね。
少しお痩せになったようですし。』
『心配はいらぬ。
…私が痩せるとお前が叱られてしまうのか…。
息苦しいものだな。
自己管理はしているつもりだし、死のうなどとは考えていないから安心してくれ。』
『オリアナ様、私は、その様な理由で申し上げたのではありません。
…御髪は私が致します。
お前達は下がってよろしい。』
『はい、それでは失礼致します。』
『オリアナ様。
侍女を供にする事も許されず、たったおひとりでこの国にお越しになった貴女様は、この国の誰よりも気高く潔く美しく、一目で私は心を奪われました。
この方の侍女としてお仕え出来る喜びを感じると共に、お守りして行くのは私の使命と心得、全力でお尽くししようと思いました。
それは月日を経た現在でも変わる事はございません。
…そして日々の中で思う事がございます。』
『なんだ、ギュリス。』
『貴女様が再びお国にお戻りになるために、その手助けをするのが私の本当の務めであると確信したのでございます。』
『…それは…』
『女の私ですら魅了されたのです。
お国には貴女様のご帰国をお待ちになっている殿方がいらっしゃるのではないかと。』
『…。』
『普段、陛下のお言葉に、揺れる心を表にお出しにならない貴女様が、あの時は…。』
『…。』
『貴女様は、この国にいらしてはいけません。』
『…ギュリス、私は1人ででもこの国を出る策を練っていた。』
『どうか私をお役立て下さい。』
『それが何を意味するか、わかっているのか?
そんな事をしたら、お前やお前の家族にまで害が及ぶのだぞ。』
『私には親はおりません。
…私の母は小間使いとして宮殿に上がり、ある方のお手付きとなり密かに私を産みましたが、産後の肥立ちが悪く亡くなったのでございます。』
『ある方とは…陛下の事か。』
『…その通りでございます。』
『陛下を恨んでいるのか?』
『…憎い相手ではありましたが…。
風の噂で聞いた落とし子の事を哀れに思ったのか、影で支援をして下さっていた様です。
私は、貴女様が母の様に危険な目に会うのが怖いのです。』
『では…やはりお前の母上は殺されたというのか?』
『おそらく…。
ですが、それは陛下にではありません。』
『ふむ。
もう、何度かそんな目に遭っているぞ。ふふ。
私に子が生まれるのを恐れているのであろうな。
よくある事ではあるが。』
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La tentative ( 企て ) 6
そなたに武器を持たせれば、それは儂の破滅にも繋がるであろう。
見張りをつけてはいるが、軍にいたそなたじゃ。
薄暗いこの寝所に小剣を隠し持って、というのも容易いことと心得てはおる。
ところが…。
年老いた我が身に若い頃の俊敏さはないにしても、そのスリルをも楽しんでいる自分がいるのじゃ。
そなたになら切られても…とも思うのは何故であろう。
どうやらそなたの魔術にかかってしまった様じゃのう。
この儂であっても、立ち入る事が許されない誠の聖女のままに、ここにいてくれるのが奇跡のようで嬉しいのじゃ。
ふっふっふ、
いよいよ儂も終わりが近いのかのう。
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La tentative ( 企て ) 5
今回は、彼女に王がつけた名前が出てきますが、気になる方は読まない方が良いと思われますので宜しくお願い致します。
『金糸の刺繍を施した扇、眩いばかりの黄金のティアラ、宝石を散りばめた煌びやかなドレス、色とりどりの薔薇を咲かせる華やかな離宮。
儂の心からの贈り物を、そなたは何ゆえ喜ばぬのじゃ。
魅惑的な青い瞳に儂を映していても、そなたは笑み一つ向けてはくれぬ。
こんなに儂が尽くしておるのに、そなたは何ゆえ応えぬのじゃ。
オリアナよ。
そなたは儂のものじゃぞ。
儂だけのものじゃ。
誰にも渡さぬ。
誰にも…。』
『…そう言えばそなた…ここに来て直ぐに男名を口にしたのう。』
『!』
『そうじゃ…その男をここに呼んでやろうか。
そして、儂の力を見せつけてやるのじゃ。
…我ながら名案ではないか。』
『陛下。
私は、将軍である父から男性として教育を受けました。
幼き頃から、人形ではなく剣を、豪華なドレスより美しい毛並みの馬をと普通の女性とは違う物を好んでいた様に思います。
それは長い間の思考でもあり、本来の姿で生きる現在でも変われずに、未だに戸惑う事が多くございます。
陛下の御心を正面からお受けしようと思えば思うほど、過去の自分が邪魔を致します。
しかしながら、その事で陛下にご心痛を負わせてしまった事は、私の不徳の致すところでございます。
…どの様な男名を口にしたのか、今となっては思い出す事も出来ませんが、お言葉の通り私は陛下だけのものでございますし、これ程までに愛されていることを幸せに思います。
陛下のお心を改めて伺い、これまでの自身の思慮の足りなさを深く反省し、努力して参ろうと思います。』
『これからは、儂に微笑んでくれるというのか?
いつでも儂を満たしてくれると?』
『勿論でございます。
私は陛下の全てを愛しています。』
『その言葉、嘘偽りではなかろうな。』
『陛下の真心に、真心でお応え出来ないオリアナとお思いですか?』
『ふむふむ、分かれば良いのじゃ。』
『ありがとう存じます、陛下。』
王につけられた彼女の名を『オリアナ』としました。
自分でも違和感を感じるのですが書いてみました。
オリアナ、オリアーナを検索してみますと、ゲームやアニメのキャラの名前で使われているのがわかりますが、響きが良かったので使う事にしました。
オリオンを意味する名前だそうです。
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La tentative ( 企て ) 3
『…しばらく自由に会えなかったが、元気でいたか?』
『ああ。…お前はどうだった。』
『お前も知っているだろう。
こんな格好をさせられた上、女性としての所作の特訓だぞ。毎日辟易していたよ。』
『…しかし綺麗だよ。』
『…こんなもの。
向こうに行ったら、キュロットを履いて馬に乗ってやる。』
『ははは、叶うといいな。』
『…お前は案外冷静なのだな。安心したよ。』
『そんなふうに見えるのか。
明日お前が旅立つというのに、冷静でいられるわけはない。』
『…突然別れが来ることもあるのだし、今度の事では使者が来てからだいぶ時間があったのだからまだ良い方だろう。
その間にお前が、私との逃避行を計画してしまってはとハラハラしたが。ははは。』
『計画したさ。』
『したのか?』
『お前が誰かのものになるくらいならと…。だが、それは愚かしい事だ。
お前が苦悩の末に出した結論を、俺がどうこうしてはいけないだろう。』
『…そうか。よかった。』
『行くのはお前の決意。』
『…。』
『救いに行くのは俺の決意だ。』
『…お前、犬死にしたいのか。』
『犬死にではない。それにお前の為に死ねれば本望だ。』
『お前はこの国で生きてくれ。
主人としての最後の命令だ。』
『…。』
『お前と私は、少しの偶然から人生を共有し、また離れる。それだけのことだ。
その先にはまたそれぞれの人生が待っているはずだからな…。自分を大事にしてくれ。』
『偶然?
運命だ。
もう一度共有する為に、俺はお前を救いに行く。
だからお前こそ生きていてくれ。』
『…良い…。もう良いのだ。
考えてみれば、本当に愛している人と生涯を共に出来た人間は少ないかもしれん。取り繕うだけの家庭の如何に多い事か。私もその道を辿るだけのこと…。』
『本心ではないだろう。お前の言葉ではない。』
『良いかよく聞け。助けなど要らぬぞ。そして私が死んだと風の噂に聞いても信じるな。』
『なんだそれは。』
『ふふ、お楽しみにだ。』
『ぎりぎりなのにお楽しみにか。』
『私は必ずここに戻って来る。
楽観主義者ではないが、今はそう考えていなければ、身を滅ぼしそうだ…。だから、お前だけでも笑って送り出してくれよ。私も笑って旅立つから。』
『わかった。約束する。』
『アンドレ…私は王のものになる。それでも私を愛してくれるか。』
『とこしえに。』
『…今度会うときは、傲慢な女になっているかもしれんが…許してくれるか。』
『それは困るな。これ以上振り回されるのは…。ははは』
『あはは、もっとも年老いていて、誰なのか判らんかも知れぬな。』
『見損なうなよ。一目で判るさ。』
『…また会おうな…。』
『勿論だ。』
ややこしい題名で恐縮です。
後で番号を振ろうと思います。
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